秋田県角館町出身の筆者が描く、ラブストーリー
韓国でも屈指の名家であった、クォン家の一人息子サンユ。
貿易商を営む父の勧めで、秋田国際交流大学へ2年間の語学留学をすることになった。
彼はそこで一人の女性と出会い、やがて恋に落ちる。
恋人とそして仲間と、楽しく充実した大学生活を過ごしていたサンユだったが、ある時訪れた角館の祭りの夜から、運命の歯車は思わぬ方向へと回り始める―――。
物語の中には、秋田県内各地の名所も登場します。
秋田の風景に思いを馳せながら、彼らのストーリーをご覧下さい。
桜の花びらが散った黒地の着物が白色の肌をいっそう引き立てている。
「ねぇ、私、この着物を着るたびに角館を思い出すの」
真由美はポスターにそっと手をあてて遠い目をした。
夏希の気持ちはどんどん昂ぶってくるのだった。
いよいよ花火が上がり、その爆音が体に伝わってきていっそう感動が大きくなる。
夏希はサンユの手を引っ張って、ハート形の入口をくぐった。かまくらの中央には火鉢が据えられていて、そのせいか中に入るとほんのり暖かい。
お祭りともなれば様相は一変する。帰省する者に加えて観光客がどっと押し寄せ、町中が活気づくのだ。「よーい、さの、やあー」という威勢のよい掛け声が聞こえ始めると・・・
「ひゃぁー!なまはげだらけじゃないか」
「そうよ、ここには多種多様ななまはげが勢ぞろいしてるのよ。あれなんかサンユに似てない?」
「うそつけー、おれは韓国人・・・
サンユは美しいという辰子を真由美に重ね合わせ、その情景を創造しながら聞いていた。真由美はこの伝説には続きがあると言う。
夏希の案内で、いつもの仲間たちが竿燈大通りを歩いている。
小学生くらいの子が、小さい竿燈「小若」を額や腰にのせて、技を披露しているのを見たサンユは驚いて夏希に声を掛けた。
二人の嬉しそうな表情がすべてを物語っていた。伝統婚礼の化粧で、花嫁を守るという「ヨンジコンジ」にのっとって・・・
夢みたいな話かもしれませんが、私はこの小説を映画化・ドラマ化したいというその一心で本にしました。
私は韓国の、あるスターの大ファンで、その方に主役をプレゼントしたいと思って書き始めたのがきっかけです。
この物語の舞台は秋田県です。秋田には何百年も引き継がれてきたすばらしいお祭りや伝統行事がたくさんあり、物語の随所でそうした行事などを紹介しています。
執筆中に東日本大震災があり、その後、秋田県はのどかで平穏だったにも関わらず、風評被害などで観光客が減少しました。
名だたる観光地が閑散としているのを目にし、とても残念な気持ちになりました。
あの頃のように、にぎやかで活気のある町に戻ってもらいたいという思いもふくらんで、この作品を絶対に世に出さなければ、と執筆を進めました。
韓流ドラマの大好きな四十代、五十代の女性には特に読んで頂きたい作品です。
どうか皆さんのご協力を頂きながら、この秋田で撮影が行われることを切に願っております。
桜 京香(さくら・きょうこ) 秋田県仙北市角館出身、秋田市在住